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【元・信金&公庫職員が伝授】社内の「資金移動(他行振り込み)」で発生する手数料を年間数万円単位で削るコツ

複数口座運用で唯一発生するデメリットが自社口座間の振込手数料。移動回数の集約、定額自動送金、手数料の安い口座を経由地にする設計で摩擦コストを最小化する方法を解説します。

13分で読めます

口座を用途別に分けると、資金繰りは格段に見やすくなります。しかし1つだけ、分けたことによって新たに発生するコストがあります。自社の口座から自社の口座へお金を移すときの、振込手数料です。
取引先への振込と違い、これは1円の価値も生まない純粋な摩擦コストです。しかも「自社内の移動だから」と意識されにくく、削減の対象として検討されないまま毎月積み上がっていきます。
本記事では、この自社口座間の資金移動コストの実態を試算したうえで、移動回数の集約と口座の組み合わせによって削減する方法を解説します。

運営主体の開示:本記事のメディアは、法人向け銀行サービス「フィンサーバンク」を提供する株式会社f9k・株式会社Finswerが運営しています。記事の後半では自社サービスにも言及しています。

この記事の要約
複数口座を運用する際に唯一発生するデメリットが、自社口座間の資金移動にかかる振込手数料です。取引先への支払いと異なり、この移動は何の価値も生みません。削減の要点は3つで、移動のタイミングを月1〜2回に集約して回数そのものを減らすこと、定額自動送金サービスで手作業をなくすこと、そして手数料の安い口座を資金の経由地に据えることです。月4回・年48回の資金移動を行う企業であれば、1件330円の口座から1件90円の口座へ移すだけで年間1万円強、移動回数を半分に減らせば合計で年間2万円規模の削減になります。

この記事のハイライト内容
摩擦コストの実態振込手数料に加え、都度移動による経営者の時間的ロスを金額換算
削減の3テクニック移動回数の集約、定額自動送金の活用、安い口座を経由地にする設計
削減シミュレーション月4回・年48回のケースで、口座の組み合わせ別に年間コストを比較

資金移動の摩擦コストとは、事業活動そのものには何も寄与しないのに、口座を分けたことによって発生する費用と手間の総称です。口座を分けるメリットを打ち消さない水準まで、この摩擦を下げられるかどうかが複数口座運用の成否を分けます。

見落とされがちな「自社口座間の摩擦コスト」の実態とは?

複数口座のデメリットとして「資金移動の手間」が挙げられることはあっても、それが年間いくらになるのかを試算しているケースはほとんどありません。まず金額にします。

コストの種類発生の仕方年間の目安
振込手数料移動1回ごとに発生1件330円×年48回で約1万6,000円
経営者の作業時間都度ログインして操作する1回15分×年48回で12時間
残高不足による失敗移動を忘れて引き落としが失敗する再手続きの手間と取引先への連絡

振込手数料は「回数 × 単価」で決まる

自社口座間の移動でかかる手数料は、取引先への振込とまったく同じです。同一銀行内の移動なら無料または安価ですが、用途別に口座を分けている以上、多くの場合は他行宛になります

ここで押さえておきたいのが、他行宛の振込にかかる銀行側の原価です。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は2021年10月1日、それまで銀行間の個別協議で決まっていた銀行間手数料を廃止し、内国為替制度運営費を新設しました。これは送金側の銀行が受取側の銀行へ支払う為替取引1件あたりの費用で、送金額にかかわらず一律62円です(2025年10月16日の公表により、2026年10月1日からは61円へ改定される予定)。

つまり1件あたり330円の振込手数料のうち、銀行間で実際にやり取りされているのは62円です。差額は各金融機関の取り分であり、ここに大きな開きがあるからこそ、同じ他行宛でも90円の銀行と330円の銀行が併存します。自社口座間の移動は、この差額をそのまま負担する行為にほかなりません。

見落とされやすいのは、この費用が支払業務の効率化とは別枠で積み上がる点です。取引先への振込手数料を下げても、口座間の移動を月に何度も行っていれば、削減効果はその分だけ相殺されます。

経営者の時間が最も高い

金額として現れないぶん、実際にはこちらのほうが高くつきます。

資金移動は「残高を確認して、必要額を計算して、振込操作をする」という一連の作業です。1回15分として月4回なら年間12時間。時給換算4,000円(年収約800万円相当)の経営者が行っていれば、年間4万8,000円分の役員人件費が口座間の移動に費やされている計算になります。

しかもこの作業は、支払期日の直前という最も忙しいタイミングに発生します。金額以上に、判断の質を落とす種類のコストです。

融資の相談を受けていたころ、資金繰りの話をすると「毎月そのあたりは自分がやっています」と答える経営者が少なくありませんでした。社長本人が資金移動の実務を握っている会社は、資金繰りの実態を最もよく把握している一方で、その把握のために最も高い時間単価を払っています。金融機関から見れば安心材料ですが、経営資源の配分としては明らかに歪んでいます。

移動忘れが引き起こす二次被害

都度対応の運用では、移動そのものを忘れるリスクが常にあります。支払専用口座の残高が足りず、振込や口座振替が失敗すると、取引先への連絡と再手続きが必要になります。

1回の失敗で失う時間と信用は、節約した手数料をはるかに上回ります。この意味でも、都度判断に依存する運用は割に合いません。

資金移動コストを削る3つのテクニックとは?

対策は、回数を減らす、手作業をなくす、単価を下げるの3方向です。

テクニック1:移動のタイミングを月1〜2回に集約する

最も効果が大きく、今日から実行できるのがこれです。支払いが発生するたびに移動するのをやめ、あらかじめ決めた日にまとめて移します

手順はシンプルです。

  1. 当月の支払予定を先に集計する(請求書の受領時点で確定するものが大半)
  2. 月初か、五十日(5日・10日・20日・25日など)の前日に、必要額をまとめて移す
  3. 想定外の支払いに備え、固定費の1ヶ月分程度を上乗せしておく

これだけで移動回数は月4回から月1〜2回になり、手数料と作業時間が同時に半分以下になります。この配分ルールを口座構成に組み込んだ設計は、本シリーズ第3回の「入金用」「支払用」「蓄積用」の3区分で通帳を見るだけで資金繰りがわかる財務構造で解説しています。

テクニック2:定額自動送金サービスを活用する

移動額が毎月ほぼ一定なら、金融機関の定額自動送金サービスを使う方法があります。あらかじめ指定した日に、指定した金額を自動で移してくれる仕組みです。

とくに向いているのが、本シリーズ第3回で扱った蓄積用口座への納税準備金の積み立てです。毎月同額を移す運用なので、自動化との相性が良く、「余ったら移す」という形骸化も防げます。

ただしサービス自体に月額料金がかかる金融機関もあるため、手数料と利用料の合計で判断してください。振込1回あたりの手数料が安い口座であれば、自動送金サービスを使わず手動で月1回移すほうが安く済むこともあります。

テクニック3:手数料の安い口座を「資金の経由地」にする

3つ目が、口座の組み合わせそのものを見直す方法です。

複数口座を運用していると、資金は「入金用 → 支払用」「入金用 → 蓄積用」と移動します。この移動元と移動先のどちらか一方でも他行宛の振込手数料が安ければ、移動コストは下がります

とくに支払用口座は、取引先への振込件数が最も集中する口座です。ここに他行宛が一律で安い口座を割り当てれば、取引先への支払いと自社口座間の移動の両方でコストが下がります。1つの見直しで二重に効くため、優先度が高い施策です。

【シミュレーション】口座の組み合わせ別の年間コスト比較

月4回・年間48回の資金移動を行う企業を前提に、口座の組み合わせによる差を試算します。

ケース移動1件の手数料年間の移動回数年間コスト
A:メガバンク間で都度移動330円48回15,840円
B:メガバンク間で月2回に集約330円24回7,920円
C:手数料の安い口座へ移動(都度)90円48回4,320円
D:手数料の安い口座へ月2回に集約90円24回2,160円

AとDの差は年間13,680円です。金額だけを見れば小さく感じるかもしれませんが、ここに前述の作業時間(年間12時間・約4万8,000円分)が乗ります。回数を半分にすればその時間も半減するため、実質的な削減効果は年間3万円を超えます。

さらに、支払用口座を手数料の安い口座に変えた場合は、取引先への振込コストも同時に下がります。月50件の支払いがあれば、1件330円から90円への変更で年間14万4,000円の削減です。自社口座間の移動コストの削減は、その副産物として位置づけるのが実態に近いと言えます。

資金の経由地に向いた口座の条件

  • 他行宛の振込手数料が安く、回数が増えても負担にならないこと
  • 月額基本料がかからず、口座を増やしても固定費が増えないこと
  • 振込予約に対応し、移動を先の日付で設定できること

フィンサーバンク(北國銀行フィンサー支店)は、月額基本料が無料(0円)、他行宛の振込手数料が一律90円です。支払専用のサブ口座として追加すれば、取引先への振込と自社口座間の移動の両方でコストが下がります。メインバンクを変更する必要はありません。

取引先への振込手数料そのものを下げる方法は法人振込手数料を月10万円削減する3つの方法、口座を複数持つ場合の維持費の考え方は法人口座を複数持つと維持費はいくら?で扱っています。

参考資料

まとめ

自社口座間の資金移動は、複数口座運用における唯一の明確なデメリットです。裏を返せば、ここさえ潰せば口座を分けることに副作用はありません

  • 移動のタイミングを月1〜2回に集約する。手数料と作業時間が同時に減る
  • 定額の積み立ては自動送金に寄せ、判断そのものをなくす
  • 支払用口座に他行宛の安い口座を割り当てる。取引先への振込コストも同時に下がる

年間1万〜2万円という金額は、単体では優先度が高く見えないかもしれません。しかしこの移動には事業上の意味が1つもなく、削っても失うものがないという点で、コスト削減としての性質は良好です。まずは直近3ヶ月の口座間移動の回数を数えてみてください。想定より多いはずです。

グループ会社を含む資金移動の設計については、本シリーズ第5回の子会社・別事業部を作ったときのグループ口座・資金プール管理マニュアルで扱います。

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よくある質問

Q. 自社の口座同士なら振込手数料は無料になりませんか?

A. 同一銀行の同一名義であれば無料または安価な場合が多いですが、用途別に金融機関を分けている場合は他行宛の扱いとなり、通常の振込手数料がかかります。無料にするために同一銀行内で口座を分ける方法もありますが、その場合は手数料の安い金融機関を組み合わせるメリットを失うため、総コストで比較してください。

Q. 資金移動は月何回が適切ですか?

A. 月1〜2回が目安です。支払いが五十日に集中する企業であれば、その前日に移す運用にすると管理しやすくなります。回数を減らしすぎると想定外の支払いに対応できないため、支払専用口座には固定費の1ヶ月分程度を上乗せして置いておくと安全です。

Q. 定額自動送金サービスは使うべきですか?

A. 毎月同額を移す用途、とくに納税準備金の積み立てには向いています。ただしサービス自体に月額料金がかかる金融機関もあるため、振込1回あたりの手数料が安い口座であれば手動で月1回移すほうが安く済む場合もあります。合計コストで判断してください。

Q. 口座間の移動を減らすと、支払用口座の残高が過大になりませんか?

A. 当月の支払予定額に固定費1ヶ月分を上乗せする程度であれば過大にはなりません。残高が固定費の3ヶ月分を超えて積み上がっている場合は、超過分を入金用または蓄積用の口座へ戻してください。支払用口座に置く金額が多いほど、誤操作や不正送金が発生したときの被害額も大きくなります。

Q. 手数料より作業時間のほうが問題なのですが、どうすればよいですか?

A. 移動回数の集約が最も効きます。年48回を24回にすれば作業時間も半減します。そのうえで、支払予定の集計を請求書の受領時点で行う運用にすると、移動の際に金額を計算する手間がなくなり、1回あたりの所要時間も短縮できます。

Q. どの口座から見直すのが効果的ですか?

A. 支払専用口座です。取引先への振込件数が最も集中する口座なので、ここを他行宛が安い口座に変えると、取引先への支払いと自社口座間の移動の両方でコストが下がります。1つの見直しで二重に効くため、優先度が最も高くなります。

金和 昇汰

著者

金和 昇汰

株式会社f9k セールス

近畿大学経営学部を卒業後、2015年に大阪シティ信用金庫に入庫。リテール営業及び融資業務に従事。2022年に日本政策金融公庫へ入社し、スタートアップ・中堅中小企業向け法人融資業務に従事。2025年より株式会社Finswer・f9kに参画。

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