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【元・公庫職員作成】公庫の創業融資の必要書類や資料作成のポイント!

日本政策金融公庫の創業融資に必要な書類一覧と、審査で重視される5つのポイントを元公庫職員が実践的に解説します。

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起業を考えている多くの人々にとって、資金調達は事業成功の鍵です。中でも「創業融資」は、起業家にとって有力な選択肢であり、特に日本政策金融公庫の創業融資は、創業期の資金調達において重要な役割を果たします。

本記事では、創業融資の審査を通過するために不可欠な書類準備や資料作成のポイント、そして審査で重視される要素について、実践的な解説を行います。


日本政策金融公庫とは?創業者・中小企業の強い味方

日本政策金融公庫は、政府が全額出資して設立された金融機関であり、創業者や中小企業の支援を目的としています。一般的な銀行とは異なり、預金業務は行わず、融資業務及び事業成長のサポートに特化している点が特徴です。特に、創業当初でまだ事業実績がない場合でも、親身に相談に乗ってもらえることから、多くの起業家から活用されています。

日本政策金融公庫には

  1. 小規模事業者・創業企業向けの支援を行う国民生活事業
  2. 農林水産業者向けの支援を行う農林水産事業
  3. 中小企業やスタートアップ向けの支援を行う中小企業事業

の3つの事業がありますが、本記事では国民生活事業の融資について解説します。

国民生活事業の創業融資を利用する主なメリットは以下の通りです。

  • 起業・開業時から融資を受けることができる: 民間金融機関が事業実績がない創業者への融資に慎重な傾向がある中、日本政策金融公庫国民生活事業では国の政策に基づいて新たな事業の創出を後押しする役割を担っており、起業・開業する方への融資を積極的に行っています。例えば、「新規開業資金」は、新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象で、原則として無担保・無保証人で融資を受けられます。
  • 事業計画書の書き方についてアドバイスをもらえる: 日本政策金融公庫国民生活事業には「創業サポートデスク」が全国152支店に設置されており、事業計画の立て方や融資制度に関する相談に対応するなど、様々な支援を提供しています。創業前の売上実績がない時期は、特に事業計画書の内容が融資審査で重要視されるため、専門家からの助言は大きなメリットとなります。
  • 民間の金融機関よりも金利が低く、返済期間も長く設定可能: 日本政策金融公庫国民生活事業の金利は、利用する融資制度や使い道、返済期間などによって異なりますが、概ね1~3%前後と、民間の金融機関に比べて低く設定されているケースがあります。また、返済期間も長く、例えば新規開業資金の場合、設備資金は最大20年以内、運転資金は最大10年以内と、長期での返済が可能です。さらに、利息のみを支払う据置期間を最大5年設定できるなど、事業者が余裕を持って返済できるよう配慮されています。

創業融資の審査で重視される5つのポイント

日本政策金融公庫の創業融資は、まだ実績がない相手への融資であるため、審査は厳しく行われますが、以下の5つのポイントをしっかりと押さえることで、審査に通過する可能性を高めることが期待できます。

ポイント1:自己資金比率

自己資金とは、創業にあたって自力で用意したお金のことで、法人・個人の口座は問いません。自力でコツコツ貯めたお金が理想とされ、過去半年から1年分の通帳でその履歴が確認できることが重要です。預金以外にも、保有する株式を現金化したもの、今後支給される退職金、保険の解約返戻金なども自己資金として認められる場合があります。親や親戚からの援助は、借りたお金だと自己資金とは見なされませんが、支援があること自体はプラスに評価されることがあります。

一方で、「見せ金」(知人から一時的に振り込んでもらったお金)は自己資金として通用しません。通帳を見れば一目で分かりますし、面談でその入金元について詳しく聞かれるため、このような方法で自己資金を増やすことはできません。

自己資金が重要視される理由は主に二つあります。

  1. 借入れ依存度を下げ、資金繰りを安定させるため: 事業を開始する際の総費用を全て融資で賄う「フルローン」の場合、返済負担が大きくなり、資金繰りが厳しくなる傾向があります。自己資金を一定程度投入することで、借入負担を減らし、事業の安定性を高めることができます。
  2. 創業への熱意や計画性があることの証明となるため: 金融機関は、創業者の計画性や本気度を測る指標の一つとして自己資金の有無や額を見ます。たとえ面談でどれだけ熱意を語っても、自己資金が全くない場合、「本当に本気なのか」「思いつきで起業したのではないか」という印象を与えてしまう可能性があります。計画的に自己資金を貯めていることは、事業を計画的に進められる人物であることの証となります。

自己資金の目安については、一般的には「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」とされていますが、より多くの自己資金があると、審査が有利に進みやすくなります。なお、自己資金要件が撤廃されたという情報もありますが、審査においては自己資金の有無や割合は重要な評価ポイントとなります。

ポイント2:経験・キャリア

創業融資の審査では、創業する企業にまだ実績がないため、創業者の個人がこれから始めようとする事業分野でどれだけ経験を積んでいるかが重視されます。関連する業界での経験が豊富であるほど、事業成功の可能性が高く見積もられます。

目安としては、同業種での勤務経験が5年以上あることが望ましいとされます。例えば、美容室を開業するなら5年以上のスタイリスト経験などが挙げられます。しかし、実際には5年未満の経験しかない場合も少なくありません。たとえ1年程度の経験やアルバイト経験でも、全く経験がないよりは良いとされています。全くの未経験での独立は融資のハードルが非常に高く、減額されたり審査に落ちたりするリスクが高まります。

もし経験が不足している場合は、以下の点に注意してアピールしましょう。

  • 過去の経験からの関連性を見出す: 例えば、飲食店の経験がなくても、前職で経理を担当していた経験からコスト管理能力をアピールしたり、接客経験から顧客対応能力をアピールしたりすることができます。
  • 不足する経験を補う方法を具体的に説明する: 例えば、料理経験がなくても、料理の経験がある配偶者がキッチン業務を担当するなど、具体的なサポート体制を説明することで、審査担当者の疑問を解消できます。

ポイント3:事業計画書・返済可能性

事業計画書は、具体的なビジネスモデル、市場分析、収支計画などが含まれる、融資審査で最も重要な書類です。これは、単に事業内容を紹介するだけでなく、創業者の返済能力を金融機関に示すためのものでもあります。

事業計画書に記載する主要項目は以下の通りです。

  1. 創業の動機: なぜこの事業を始めたいのか、どれだけ本気で成功させたいかという熱意や、事業の将来性、着眼点などを記載します。
  2. 経営者の略歴: 創業する事業と関連する勤務経験や、会計・マネジメントなどの経験を具体的に記載し、自身の強みとしてアピールします。前職の源泉徴収票などを添付すると信頼性が高まります。
  3. 取扱商品・サービス: どのような商品やサービスを提供し、どのようなセールスポイントがあるのかを具体的に記載します。市場や競合の状況についても触れ、自社の差別化ポイントを明確にすることが重要です。
  4. 取引先・取引関係等: 現在または予定している仕入先、外注先、販売先について具体的に記載します。既に見積もりや契約書がある場合は添付し、具体的な準備を進めていることをアピールしましょう。
  5. 必要な資金と調達方法: 創業計画書の中で最も重要視される項目の一つです。資金使途の明確化として、融資により得た資金をどのように使用するのか(設備資金、運転資金など)を具体的に示し、見積書などで裏付けます。店舗の内装費用、機械購入費用、毎月の賃料、広告宣伝費、人件費など、必要な金額の妥当性を根拠とともに説明できるように準備しましょう。運転資金については、創業当初の2~3ヶ月分程度の経費が認められることが多いです。調達方法としては、自己資金や日本政策金融公庫からの借入希望額などを記載します。融資希望額が希望通りに得られない場合の第二のプラン(例えば、事業の規模を縮小するなど)も考えておくと、計画性があると評価されます。
  6. 事業の見通し: これも創業計画書で最も重要視される項目の一つであり、毎月どのように利益を出し、融資の返済を滞りなく行えるかという返済財源を示します。返済可能性の高さとして、現実的な売上予測やコスト計算を行い、収支バランスを示すことが不可欠です。売上予測には、契約書、見込み客とのメール履歴、顧客リスト、具体的な営業・集客方法などの客観的な根拠を盛り込むことが非常に重要です。単なる「絵に描いた餅」ではなく、計画自体に説得力と根拠があることを示す必要があります。融資の返済額以上の利益が出る計画を立てることが重要ですが、あまりに大きな利益計画はかえって信用されない可能性もあるため注意が必要です。

事業計画書全体としての説得力を高めるためには、金融機関の担当者が理解しやすい言葉で簡潔に記述し、必要に応じて図表などを用いると良いでしょう。しかし、情報量が多すぎると担当者が内容をしっかり見てくれない可能性もあるため、適度なボリュームを心がけましょう。

ポイント4:信用情報・支払い能力

創業融資の審査では、創業者の個人の信用情報が必ずチェックされます。これは、融資申込者がお金に対して責任感があり、計画的に管理できる人物であるかを判断するためです。

具体的には、以下の点が確認されます。

  • 日頃のお金遣い:通帳の入出金履歴から、日々の金銭感覚やお金遣いの荒さがないかが見られます。遊びに多額を使っているなど、金遣いが荒いと判断されると、融資額が減額されるケースもあります。
  • 税金や公共料金の支払い状況:住民税などの税金や、電気・ガス・水道などの公共料金の支払い状況も確認されます。支払いの遅延や滞納がある場合、お金にだらしないと判断され、審査に通るハードルが格段に上がります。
  • 既存の借り入れ状況:住宅ローンや自動車ローンなどの既存の借り入れはもちろん、カードローンや消費者金融からの借り入れがある場合、融資が難しくなる傾向があります。これは、金融機関が「借りたお金を消費者金融の返済に回すのではないか」と懸念するためです。
  • 信用情報機関の履歴:個人のクレジットカードやローンの契約・支払い履歴は、信用情報機関に登録されています。過去に債務整理や自己破産をしたり、クレジットカードの支払いを長期にわたって滞納したりすると、「事故情報」(いわゆるブラックリスト)として記録され、融資が返済されないリスクが高いと判断される可能性が高まります

信用情報に問題がある場合、回復には通常5~7年程度の期間を要します。申告した内容と信用情報機関の情報が異なる場合、嘘はすぐに露見し、信用を失いますので、正直かつ正確な情報を記載し、説明することが重要です

ポイント5:面談でのアピール(人柄)

創業融資は「人を診て貸す融資」とも言われるほど、創業者の人柄が審査に大きく影響します。事業計画書の内容はもちろん重要ですが、最終的には融資担当者との面談を通じて、自身の事業への熱意や計画性、責任感を直接伝えることが求められます。

面談でのアピールポイントは以下の通りです。

  • 熱意と計画性を伝える: なぜこの事業を始めたいのか、どう社会貢献したいのかといった動機や、事業計画の内容を具体的に、自身の言葉で熱意を持って伝えることが重要です。融資担当者は、事業の実現性や創業者の本気度を面談で確認します。
  • 事業計画の理解度: 創業計画書に記載した内容について、担当者の質問に明確な根拠をもって回答できるように準備しましょう。具体的な数値を裏付ける資料なども準備しておくと良いでしょう。
  • 事前の準備状況を示す: 創業前にマーケット調査や競合調査を行ったこと、見込み顧客へのアンケート結果など、入念な準備をしてきたことを示す資料は、計画性と本気度のアピールに繋がります。金融機関は、行き当たりばったりで融資を申し込む人物を嫌いますので、事前準備の徹底は非常に重要です。
  • 常識的な対応: 面談は30分~1時間程度で行われます。常識的な服装や態度を心がけ、誠実な姿勢で臨むことが大切です。

日本政策金融公庫国民生活事業の審査に必要な書類

日本政策金融公庫国民生活事業の創業融資を受けるためには、多くの書類が必要となり、事前の準備が非常に重要です。

申し込みに必要な主な書類

  • 借入申込書
  • 創業計画書:新たに事業を始める方、または事業を開始して間もない方が提出します。これが事業内容や資金計画の根幹となります。
  • 法人の場合、履歴事項全部証明書または登記簿謄本の原本。
  • 設備資金を申し込む場合、見積書:購入予定の機械や内装費など、設備投資に関する費用の見積もりを提出します。既に購入済みの設備でも、事業計画に含めることは可能です。
  • 代表者の本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)。
  • 飲食店などの許認可が必要な事業の場合、許認可証のコピー。
  • 特定の融資制度によっては、都道府県知事の推薦書などが必要な場合もあります。

面談の際に必要となる主な書類

  • 代表者の銀行口座の入出金明細書(過去6ヶ月分が分かるものなど)。
  • 代表者の勤務時の前年度分源泉徴収票または確定申告書。
  • 借入金の返済予定表(既存のローンがある場合)。
  • 公共料金の領収書、税金(住民税等)の領収書。
  • 不動産の賃貸借(予約)契約書または物件の説明書(店舗や事務所を賃貸する場合)。
  • その他、事業で使用する商品サンプルやメニュー表、パンフレットなど、具体的な事業内容を示す資料を持参すると、説得力が増す可能性があります。例えば、アプリ開発事業なら実際の制作物、飲食業ならメニュー表などです。

審査に落ちた場合の対処法

万が一、日本政策金融公庫の審査に落ちてしまった場合でも、冷静に対処し、再挑戦の準備を整えることが重要です。

  • 最低半年は期間を空けて再審査に挑む: 一度審査に落ちると、一般的な金融機関では最低半年間は審査に通らないとされています。この期間に、審査で指摘された課題や自身で分析した原因を改善するための具体的な対策を講じましょう。
  • 事業計画の見直しと改善: 審査落ちの原因が事業計画の矛盾点やあいまいさにある場合、計画の内容を再検討し、より実現可能性が高く、説得力のあるものに修正します。新たな根拠となる資料の収集や作成も有効です。
  • 自己資金の増加: 自己資金が不足していたことが原因であれば、この期間に計画的に貯蓄を進め、自己資金比率を高める努力をしましょう。
  • 信用情報の改善: 信用情報に問題があった場合は、その問題が解消されるまで待ち、その間に支払い遅延や滞納がないよう徹底し、健全な金銭管理を心がけましょう。
  • 認定支援機関や専門家への相談: 経済産業省が認定する「経営革新等支援機関(認定支援機関)」となっている公認会計士事務所や税理士事務所などの専門家に相談することは非常に有効です。創業融資に詳しい専門家は、過去の豊富な実績から、融資申請におけるポイントや改善策を具体的に提案してくれ、審査通過の確率を高めるサポートをしてくれます。特に、ご自身だけで審査に挑んで一度失敗した場合、専門家の客観的な視点やアドバイスは再挑戦において大きな力となります。

まとめ

日本政策金融公庫国民生活事業の創業融資は、起業家にとって強力な資金調達手段であり、その審査を成功させるためには、自己資金の準備、経験・キャリアのアピール、事業計画書の作り込みと返済可能性の提示、信用情報の健全な管理、そして面談での熱意ある説明が不可欠です。

これらのポイントを押さえ、必要書類を抜け漏れなく揃え、入念な準備を行うことで、融資の成功率は大きく向上します。万が一審査に落ちた場合でも、冷静に原因を分析し、半年程度の期間を設けて改善策を実行することで、再挑戦の道は開かれます。

事業の健全な運営は、融資審査においても間接的にプラスの影響を与える可能性があります。例えば、Finswer Bankのようなオンライン銀行サービスは、請求書のAI自動読取機能や、1件90円という業界最安水準の振込手数料など、経理業務の効率化を支援する機能を提供しています。これらのツールを活用することで、バックオフィス業務の負担を軽減し、事業者が本業に集中できる環境を整えることは、事業の成長を促進し、結果的に融資の返済能力を高めることにも繋がります。

ご興味のある方は、こちらからお申し込み・お問い合わせください。


相馬 研二

著者

相馬 研二

株式会社Finswer 取締役CSO

東京都立大学を卒業後、2007年に日本政策金融公庫に入庫。本店営業部や青森支店で法人向け融資業務に従事。その後人事、役員秘書、営業推進等の業務を経験した後、2019年から経済産業省に出向。経済産業省では、スタートアップ向け融資制度や、コロナ禍におけるゼロゼロ融資、資本性劣後ローン等の制度設計や予算要求を担当。2024年7月より株式会社Finswer/f9kのセールス本部長。

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